モトクロスを始める貴方へ(BTメンバー=バイクは楽しいメンバー)                                    カレンダーへ
 
BTメンバーへ入会しモトクロスを始める皆さん、このチームの一人のOBとして、貴方の決断を心から歓迎すると共に応援します。モトクロッサーを購入すること、貴方自身、少し前まで思いもよらなかった事と思います。特定の閉鎖されたコースのみしか走ることのできないバイクを、給料の数ヶ月分(あるいはアルバイト代の数年分)を叩いて手に入れることに、ここ数日間(あるいは数ヶ月間)、随分迷い悩んだ事と思います。貴方の周囲
方からは、時として否定的な言葉を聞かされた事もあるかもしれません。同じ世代の友人の理解は得られなかったかもしれません。しかし、実体験を伴わない経験にどれ程の価値があるでしょうか?
 
私自身、モトクロッサーを所有しメンバーとして活動した期間は2年程度だったと思います。モトクロッサーに乗ることができるのは、長い人生の中で、実は、とても短い期間しかできないことです(勿論、それぞれの事情が異なり、乗り始めた年齢にもよりますが集中して乗れる期間はおよそ30歳までの数年だと思って間違いはないかと思います)。
私が20代だった80年代から90年代には、高校や大学で出会った人の多くが中免(=中型限定の二輪免許、今の普通二輪免許)を教習所で取得しました。しかし、免許を取ってすぐに400ccのバイク(当時は大型バイクは一般的でなく最高峰は400ccであった)を所有したにも関わらず、20年経った今もバイクに乗り続けている人は、元BTメンバー以外ではあまり見かけません。「バイクはもう卒業したよ」と、彼らは言いますが、実のところ「バイクの楽しさを知らずして卒業した」と言った方が正確かと私は思います。本当に楽しいものを、人間はそう簡単に手放せないと思うからです。元BTメンバーは原付なら原付なりの楽しさ・大型バイクなら大型なりの味わいを知っているので、今もその傍らには1台のバイクがあります。(面白いことに、仮に一台しか持てないとするとコンパクトなオフ車を手元に置くことが多いようです)
 
貴方の入会したBTメンバー制度は30年の実績が有り、大勢の先輩ライダーと一緒に成長し受け継がれたものです。これから数ヶ月から数年間体験する事は、貴方にとって忘れ難いものになるはずです。貴方の今日の決断は、必ずこれからの人生においても貴重な財産になります。まずは、BTメンバーに入会した決断に、改めて敬意を表します。
 
モトクロッサーに乗ること
すでに入会を決めた貴方には無駄な説明になるかもしれませんが、モトクロッサーに乗るにあたり(既に説明は聞いていると思いますが)公道を走ることの出来る市販車との違いをもう一度説明させてください。
市販車はライダーの技量の差に「寛容」になるように設計されているのに対し、モトクロッサーはライダーの技量の差に「忠実」になるように設計されています。
例えば、150馬力以上の出力を誇るレーサーレプリカタイ
のリッターバイクですが、そのパワーは数分の1しか公道では発揮することができません。なぜならば、最高出力を誇る回転域では法定速度を大きく上回ってしまうという、とてもハイギヤードな設定になっているからです。これは、不特定多数の平均的な技量のライダーが日常的に乗ること前提とし設計されているからです。公道の実用速度域で150馬力が出せたら、僅かなアクセル操作のミスでバイクはサオ立ちしのけぞりかえってしまします。仮にGPライダーのような超人的なテクニックで操作できたとしても、1Lのガソリンでは数キロしか走れず、タイヤは納車したその日のうちにすり減り、騒音規制をクリアしたマフラーでも煩くて隣近所からクレームが来ること必死です。従って、故意に、全開走行できないように設計されています。(勿論、長距離ツーリングにおいて性能に余裕があることは全くの無駄というわけではありませんが・・・)
これに対し、あなたが手にしたモトクロッサーは、例え85ccのモデルであっても、国際A級のトップレーサーが使用しているものと全く同じものです。公道に比べ狭く起伏があり曲がりくねったモトクロスコースを、最高出力(それも同じ排気量の市販車の
倍以上)を維持したまま走り、曲がり、止まることができるように作られています。それ程、モトクロッサーは「レースに勝つ」という目標を基に、徹底的にストイックに設計されていることになります。
ですからモトクロッサーに乗ると、バイクの運動性能
を左右する最大の要素は、ライダーそのもの(=貴方自身)ということを徹底的に自覚できることです。
バイクを構成するパーツの中で、最大の重量物は貴方自身です。これから暫くの間、全く同じモデルのバイクなのに、以前からクロスコースを走っているライダーの操るバイクは高々をジャンプし
軽々と貴方を抜き去るのに対し、新人メンバーの多くは満足に走る事もできず、もどかしさを感じることと思います。 
これは、ただ単純に「乗っている人が違う」という事だけです。キチンと荷重をかけなければ(重心の位置を把握していなければ)、折角のパワーも路面には伝わらず、ブレーキをかければ即転倒ということになります。
 
お恥ずかしい話ですが・・・この違いを素直に認めるのに、私は随分時間がかかったことを今でも覚えています。モトクロッサーに乗り始めた時、私は既に限定解除(=自動二輪免許の「中型限定」を解除すること、今の大型二輪免許の事)していた、尚更、自分が「下手だ」という事が認められなかったと思います。当時は教習所で取得することができず試験場で実技試験に合格しなければ取ることができませんでした。今更ながらに
みっともない姿を晒している自分に嫌気がさしたことを今でも覚えています。しかし、この体験がもう一度自分を見つめ直すキッカケになったのですから、今となっては全く無駄な事ではありませんでした。
 
BTメンバーとしてモトクロスをすることの意義について
ここで、「もし貴方が一人でモトクロスを始めたならば」ということを想像してみてください(実は、クロスコースで出会う人の殆どがこの状態です)。

まず、公道移動できないモトクロッサーをコースまで運ぶために、最低でも軽トラックを用意しなければなりません。もしポイントに
こだわり転戦することになれば、ハイエースが必要になります。運良く格安で程度の良い中古車が見つかったとして、維持費がいくらかかるか・・・いずれにしろ、クルマは買替えなければならず(持ってなければ買わざるをえなくなり)、モトクロッサーを買う以上に思い切った金額を使わなければなりません。
 
それから、モトクロッサーを保管し整備する場所が必要です。
ポイントのかかったレースでは、納得の
いく結果を出すには新しいタイヤ替えなければなりません。納得がいかなくなると、フォークオイルを替えたりスイングアームを降ろしてグリスアップしたりします。2ストロークのエンジンでしたら、定期的にピストンリングを交換しなければなりません。その為には、軒下で雨ざらしでは保管するのは論外で、それなりのスペースのある四方を囲まれた屋根のあるガレージが(それも必要な設備を揃えた状態で)必要です。
さらに・・・環境が整っていることを前提として、今の貴方に「これだけのスキルがありますか?」と聞かれれば、おそらく「自信がない」(あるいは潔く「無い」)と答えるでしょう。資金的に余裕があれば、その度に整備士さんのいる所に持込んで工賃を払って整備してもらうという方法もあります・・・が、大抵の場合
費がかさみ、あっという間に破綻、倒産してしまうでしょう。
 
次に、万端の準備そして、モトクロスコースへ「一人」で出かけたとします。
コースは必ず地方にあります。そこまでの孤独な運転は、体力もモチベーションを
消耗する事になります。
モトクロスはスポーツです。スポーツに怪我はツキモノです。多少の擦り傷程度なら良いのですが、もし、救急車のお世話になることになってしまったら・・・貴方のバイクとハイエースはそのまま放置され、後日無残な姿のまま回収の手配をしなければなりません。それが遠くの遠征先での事でしたら、転院だけでも大変な手間と費用になります。おそらく苦い記憶だけ
残ることでしょう。「一人で走る」というだけでこれだけのリスクを考えなければならす、折角コースに出ても走りは今ひとつ消極的にならざるを得ません。
もう一つ、「仲間と走る」ということの意義を挙げます。
日曜日のモトクロスコースには、様々のレベルのライダーがいます。今日初めて走る人もいれば、IAの選手もいるかもしれません。中学生であっても経験値を積んでいるベテランもいますし、ウンチクを語る初心者もいます。
貴方の「ここまでしてモトクロス」をする理由は、何であったでしょうか?公道でバイクを転がしているだけでは得られないスキルを身につけるはずだったと思います。それには、今の「貴方の走る姿」が客観的に観察する必要があります。正確な比較のできる対象がなければ、確実なレベルアップは望めません。
一緒に走りに行く仲間の存在は安心感を与えてくれるだけでなく万が一の時の保険になります。遠慮のない助言も、力強い味方になります。一緒に走り始めた仲間なら尚更です。競い合い存在を認め合うことは、自分自身を知ることになるのです。
 
これらの必然性から生まれたのがBTメンバーの制度です。経済的な負担を減らし、設備の整った環境で、集中的・効果的にテクニックとスキルをレベルアップすることができる画期的なシステムです。
OBの多くが、卒業し次の人生のステップにおいても自分のスタイルを持ちバイクに乗り続けていられるのも、このメンバーでの体験のおかげです。不用意なマフラーの交換や見かけだけのパーツに限られた資金を使い果たす事もなく、限られた時間と労力でバイクのコンディションを維持し、仕事と家庭の合間の僅かな時間でも楽しく走らせることができるのです・・・余談ですが、私の同世代でバイクに乗っていた人間はあれ程沢山いたのに、今では数える程しかいなくなった理由のひとつを紹介します。乗れる時間が限られてくると、バイクを「走れる状態」にしておくのはなかなか難しいです。まずバッテリーが上がりセルが回らなくなり、さらに放置するとキャブレターが詰まり埃だらけでサビも広がり・・・気がついたら「不動車」なんていうのはよくある話です。
卒業した後も、私は一時1台だけになったこともありましたが、幸い
も原付を含めてですがオン・オフ両方を手元に置くことができ、機会は減りましたが楽しく乗ることができます。これは、地方で住環境に恵まれていることもありますが、BTのMXメンバーだった頃の体験が基になっています。
 
BT、MXメンバーの規約について
これまでメンバーになったことの特典について書きました。貴方は、実績のあるIA(国際A級)の選手が受けるサポートに勝とも劣らないものを、BTと貴方以外のメンバーから受けることになります。BTはこれまで、「一人のIAを育てるより100人のN
Aを育てる」ことを目標にしてきました。これは、「バイクは本当に楽しいとわかってもらいたい」(=純粋な環境(モトクロスコース)でテクニックを身につけることによって、より危険・複雑・難解な公道でのツーリングを楽しめるスキルを身につけてもらいたい)という信念があったからです。
この為に、システムの運営上いくつかのルール(=規約)が存在します。この規約は、BTが30年近く活動していく中で、その必然性から生まれたものです。多くのメンバーが等しく高品位なサポートを受け、充実した設備と備品を効率的にシェアする為のものです。
忠実に実践していただくことをお願い致します。
また、BTで利用できるものを全て使い切るのも、BTと良い関係を続けるのに必要なことです。BTの平時の業績なくして、MXメンバーへのサポートはあり得ません。また、貴方がMXの没頭する間、休日の多くをBTのピットで過ごすことになります。身近にある物をわざわざ手間と時間をかけて他店で購入するなど、無駄で無意味以外のナニモノでもないと思います。貴重な
時間の限られた資金は、効果的に使うことに努めてください。
規約は社会規範の縮図であるばかりではなく、中には、マナー的な記載もあります。マナーを学ぶのは、学校よりも大人から学ぶのが近道だと私は思います。元メンバーに魅力的な人が多いのは、
タシナミを知っている人が多いからだと私は思っています。
是非、バイクを操るテクニック、最小限の整備ができるスキル、瞬時にリスクをマネージメントできるインスピレーションとともに、「モラル(=または「常識」)」も身につけてください。
以上のことを踏まえて読んでもらうと、納得の出来ることばかりと思います。必ず熟読してください。
 
最後に元OBとして、もう一つ付け加えさせてください。
貴方はBTに初めてきた日をおもいだしてください。ピットの奥にいたMXメンバーは、どこか輝いていて見えたと思います。今日からは貴方も、一般のお客さんからは同じように見えます。貴方は注目されています。モトクロスコースでは、貴方もBTの名前も背負っている事になります。街で貴方がバイクを乗るときは勿論ですが、BTに乗り付ける際には「カッコ良く(もう判っていると思いますが、速いとか派手ということではなく「模範的に」ということです)」バイクに乗って来ることをお願いします。
BTに初めてやってくるお客さんには、これまでただ単に好きで乗ってきたがバイクに、何処かに「疑問」を感じてやってくる人が多いと思うからです。是非、そんな人の良き先輩・良き
模範になってください。貴方にはその可能性があります、BTのMXメンバーになることを決めることができたのですから・・・引退したOBの言葉より、今輝いている貴方の姿が彼らを惹きつけると思います。
是非、お願い致します。